小悪魔な彼の想定外な甘い策略
「じゃあ……じゃあ、」

言いながら、梶山君がゆっくりと私の方を向く。

たまに横を通る車のライトに照らされたり照らされなかったり、騒がしい中でもその綺麗な顔はよく見えた。


「俺に、彼女がいなければ、俺の言葉を信じてくれるんですか?」


「いや、信じるって、なにそれ……」


話がおかしな方向に進んでいく。
そしてやっぱり、私は軽い女だと思われたらしい、ということが悲しい。

例え相手がただの職場の後輩であれど、それでもその不本意な評価は取り下げて頂きたい。


「俺に彼女がいないなら、すみれさんのことを……「いや、」


思わず手で梶山君の言葉を制する。

「彼女、いるでしょ?いないなら、なんて仮説はありえないでしょ?大事にしなよ。梶山君の良さは、彼女を大切にするところだと思う」


梶山君の綺麗な顔が、何とも言えない表情になる。
歪む、という表現が近いかもしれない。
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