小悪魔な彼の想定外な甘い策略
ぐ、と返事につまった私に軽くウィンクすると、バタン、と試着室のドアを閉める梶山君。


いやいやオイオイ、パチッ!じゃないから!!

て言うか、返して、服!!!



愕然とする私の耳に、もっと愕然とするような言葉が聞こえてくる。


「あのオフショルのワンピ、このまま着ていくから、この、着てきた服お願いー 」


「はーい、りょうかーい!あのワンピ、アイボリー、ラス1だったんだよー、智くんラッキー!」


……って。
店員さんと梶山君の会話する声が段々遠くなる。
何してんの?何する気??


えーと、つまり。私のセーターが人質に取られたから……私はこれを着て行くしかないってこと?


呆然と試着室内の鏡を見つめる。


そこにいるのは、なんとも貧相な私。

確かにワンピはかわいい。


……だけど、そういうことじゃない。

確かに今日の気候でセーターは薄手と言えど暑かった。


……それでもそういうことじゃない。
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