小悪魔な彼の想定外な甘い策略
ドアの外に人の気配がないので、そっと開けてみる。


「はーい、お待たせ!!」

陽気に遠くから声をかけてくる梶山君。

「……ねー、服返してよ……」


「え、似合いますってば」


小声でまた小突きあっていると、声から察するにさっきまで外で梶山君と話していたと思われる店員さんが駆け寄ってくる。


「きゃ~あ~!初めまして!!智君の彼女さん?かわいーよろしくー、うふふっ」


思いっきり営業スマイルで話しかけつつ、目は冷静に上から下まで私を見て、品定め感半端ないんですけど。怖いっての。


思わずブスッとその店員さんを見ていると、腰の辺りをつつかれる。ああそうか。演技ね、演技。


「……っと、いつもお世話になってます!ありがとうございます!」


ぺこっとお辞儀をし、出口へと身体を向けつつ
『では』と口の中でモゴモゴ言う。

居心地悪いったらないよ。
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