小悪魔な彼の想定外な甘い策略
まだまだなにか話したそうな店員さんだったけれど、他のお客さんに呼ばれ、名残惜しそうに立ち去る。


「んじゃまたね!ありがとー!」


その背中に梶山君が声をかけ、二人でお店を出る……手は当然のようにつないで。


お店を出て暫く歩き、もう大丈夫だろうと思われる道端で思いの丈をぶつける私。


「なーんなのよ、あれ!!」


「うん、すみれさんぎこちなかった!俺の演技力でカバー出来たから良かったようなものの……」


「いや、私の戸惑いは自分の演技力に向けてじゃないんですけど……て言うか、服!」


私に合わせて立ち止まり、斜め上からにこにこと微笑む梶山君。


「あ、そうだ、忘れてた」


手に持っていた、さっきのセレクトショップの妙にオサレな紙袋を二つ提げていて、そのうちの1つをごそごそする。


「はい、これ。寒いですよね、肩」


そんな台詞と共に、なにかがふわりと私を包む。
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