小悪魔な彼の想定外な甘い策略
「俺のことはどうでもいいんです、今日はこれからバーテンに俺達の、いい雰囲気を見せつけて焦らせるんでしょ? 」


「そ、だよね。やりますか。折角協力してくれる梶山君と、理解のある彼女の為にも」


分かればいいんだ、ということなのか、無言で頷く梶山君と歩くうち、ついに蓮田さんのバーに着く。


「あ、やべ、忘れてた」

梶山君が呟き、ごそごそと袋を探り、取り出したピンクゴールドのマフラーを巻く。


「……おー、あったかい」

にこにこと笑う梶山くんは、街灯の下でとってもさまになっていて。


今更だけど、私なんかの為に申し訳ない、と改めて思う。


「……梶山君、ありがとね」


「なんすか、急に……」


マフラーに口許を埋めながら梶山君が私を見下ろす。

「いや、ほら、だから私のために色々……」


私の言葉を聞いて、ふぅっと笑顔が柔らかくなった気がした。

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