小悪魔な彼の想定外な甘い策略
そりゃ、そうか。
そりゃそうだよね。


だって、梶山君は楽しい職場の後輩。
気を使わなくていいし、食べ物の趣味も合う。


そりゃー、そっちの方が楽チンだもの。


そういうことを考えて、今蓮田さんと対峙する緊張感から逃れるのはやめよう。


梶山君の背中を、初めて頼れる感じ……と思いながら見つめる。


ブブブブブ ブブブブブ


ドアが今まさにバーへの空間を開く、というタイミングで、まさかのバイブ音。


「……あ」


梶山君が小さく声を出し、ポケットに手を入れ、スマホを取り出す。



「あ、いいよいいよ、出て!私、軽く先に入って慣らしとく!」


自分でも『慣らすってなんだよ』と思ったけど、早く梶山君を電話に出させてあげたくて。


だって、お休みの日のこんな夜遅く。


きっと、今日私のせいで会えなかった彼女に違いない。


スマホを持って、ドアノブに手をかけたまま、戸惑う梶山君。
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