小悪魔な彼の想定外な甘い策略
2
*****

「せーんせ、これ教えてー!」

「あ、次あたしだし」


午後9時半、中2の英語クラスを終えて事務室に戻ると、黄色い声に出迎えられる。


出迎え、とはいえ誰一人としてこっちを見ていないことは明白なのだけど。


いつものこと。
授業終わりに梶山君に群がる女子生徒達。

今日は確か……中1の数学か。


梶山君は生徒達に大人気だ。

詰め込むだけの授業じゃなくて、時には横道にそれたりするので面白いし、生徒達曰く教え方も分かりやすいのだそうだ。

いや、あんた達の目的はそこじゃないだろう、と思いつつ、阻む理由もないので、いつもの光景として視界の隅に入れておく。


私は、どうせならまとめテストの丸付けをここで済ませていってしまいたい。

きゃあきゃあと楽しそうな声と、満更でもなさそうな梶山君の声を聞きながら自席に腰かける。
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