小悪魔な彼の想定外な甘い策略
出来たら、知られたくなかったと思っている。

……なんで?


『相手はただのゲーム感覚なのに、彼氏候補なんて言っちゃって寒いオンナだな』と思われることが嫌なんじゃなくて……なんていうか、もっとこう、根本的に。


そんなオンナだと、梶山君に思われたくない、みたいな?


……それじゃ、まるで、私が梶山君のことを……。


一人固まる私をよそに、梶山君と詩音さんが何やら話して笑いあっている。


ああもう、なんなんだろう。

私は、蓮田さんが好きなんだよね?
……でも、目の前にいる、この幼馴染みだという詩音さんとの仲には到底割って入れないと思ってもいる。


お目当ての蓮田さんに相手が居たからって、手近な職場の後輩に鞍替え?


……サイテーだ、私。


「……、んじゃ、そろそろ帰りますか?すみれさん」


詩音さんから私に向き直り、右手を慣れた風に差し出して梶山君が笑う。


その笑顔はとても自然で。
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