小悪魔な彼の想定外な甘い策略
「バーテンダーさんと、お似合いです」


「ありがとう」


詩音さんに見送られ、お店を出る。

結局あのまんま、蓮田さんは帰ってこなくて。

ゲーム感覚で次々エッチしちゃうくせに、詩音さんと、そのゲーム相手との3人の場は居心地が悪くて逃げ出すなんて……そこで平然と構えるような神経の太さがないところも、やっぱり素敵。


でも、この気持ちは恋じゃなかったみたい。


「……梶山君、今日はどうもありがとう」


お店を出て少し歩いたところで、言いながら手を離す……つもりが、離れない。


「?」


いや、ここ、職場の近くだし。時間は深夜とはいえ、どこで誰が見ているか分からないし。


おまけに、歩くのをやめてしまった梶山君に引っ張られるように私も立ち止まる。


「……ど、したの?」


「……すみれさん」


梶山君の顔は、街灯に照らされ、ピンと張りつめた冬の空気の中、ドキッとするほど綺麗で。
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