小悪魔な彼の想定外な甘い策略
なんで?

なんでそんな真剣な顔をしているの?

いつもみたいにふざけようよ。明日も仕事だし。


……それとも、なにか、あるの?



どれくらい見つめあっていたんだろう。

ほんの数秒だったのかもしれないし、うんと長い時間だったのかもしれない。


やっと、ふわりと梶山君が表情を崩しながら、今来た方角を指差す。


「見てください、あれ」


その指の先、ずっと視線を辿っていくとそこには、
「……バーがどうかしたの?」


今出てきた蓮田さんのお店があるわけで。


「あるにはあるけど、クローズの札、ちっちゃ!」


……は?


予想外の言葉に、しばし脳内が整頓時間を設ける。


あ、札ね、札。クローズの。詩音さんがかけたというやつ。


確かに、小さくて細長いプレートがノブに下がっているのが見えた。
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