小悪魔な彼の想定外な甘い策略
どの理由だとしても、サイテーだ、と思った。


私は一体何をしているんだ。


自分で自分の気持ちが分からないなんて。



「はい。じゃあ乗ってください」


私の複雑な思いなんてお構いなしに、梶山君がタクシーを停め、私を押し込む。

ああ、これ、この間もやられたし。
じゃなくて、昨日か。

……昨日の夜のことが遠い昔のよう。


「それじゃ、まったあっしたー!!おやすみなさーい!」


深夜とは思えない爽やかな声を聞きながら、何となく手を振る。


一人になった車内で、窓ガラスに頭をもたげながら、詩音さんの顔を思い出す。


蓮田さんに甘えて。しっかりと意思表示して。揺るがない思いをきちんと伝えて。



詩音さんと私は、随分違うな。


色んなことがありすぎた1日を振り返りながら、そのまま目を閉じ、私は、深い眠りに落ちていった。

梶山くんと一瞬触れた唇が、温かい気がした。
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