小悪魔な彼の想定外な甘い策略
「はい、この間はありがとうございました!」

思わず力んだ私に、キュッキュッとグラスを磨くいい音が返ってくる。

ふと見ると、蓮田さんはそりゃあもう素敵な笑顔で私を見つめていて。

ふ、と更に笑ったかと思うと、目の前のカウンターを指して
「お礼を言うのはこっちだから。どこでもどうぞ」
と言ってくる。

店内をぐるりと見回すと、ボックス席に、サラリーマンが二人、カウンターの右の隅に男の人が一人。

何となく、カウンターの左から二番目のスツールに腰かける。


もらったおしぼりで手を拭きながら、もう夏でもないのにモヒートを注文し、ふぅと息を吐く。

あーあ。あれだけ予防線を張っていたつもりなのに、こうして目の前にしてみたら、めちゃくちゃかっこいい。
でも、バーのマスターなんて、絶対、恋の相手として、ふさわしくないよね。

……でもすでに、あの笑顔にきゅんきゅんなんですけど。

くそー私、やっぱり、好きになってしまう気がする。
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