小悪魔な彼の想定外な甘い策略
距離を置くなんて言うと大袈裟だけど、なんてことなかった。


薄々分かっていたことだけれど、元から俺がぐいぐいすみれさんに、ちょっかいを出していただけのことなので、俺がそれをしなければ、距離は一気に開いた。


早く出勤しなければ二人きりにもならないし、仕事中は誰とも喋る暇なんてないし、少し空いた時間は、大抵しんぽうさんと下らない話をしていた。


だけど、いつも目で追ってしまった。すみれさんのこと。


そんな、悶々とした日々が続くうち、すみれさんが不審な動きを見せた。


仕事を定時で終え、いそいそと帰ってしまったのだ。

まずい。まずい。絶対にまずい。


俺は、生徒の室岡達に囲まれて、なんたかんだ質問に答えたりしながら、そんなすみれさんを横目で見ることしか出来なくて。


『すーちゃんセンセ』と呼ばれることで過去の記憶を刺激することを期待して、わざわざその呼び名ですみれさんに声を掛けさせたバチが当たったんだな、と思いながら、その場を動けなくて。
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