小悪魔な彼の想定外な甘い策略
何だか蒸し暑い夕方で。

俺の家と詩音の家の間くらいにある小さな公園で偶然行き合ったタイミングだった。


俺は、『基礎練が辛い』というアホみたいな理由でサッカー部を辞めて帰宅部で。

詩音は、吹奏楽部に入っていて毎日遅くまで練習していた。


だから、近所なのに下校時間が違うせいで、あまり顔をあわせる機会がなかった。


俺の『付き合おうか』への詩音の返事は『……やだ』だった。


俺は、耳を疑った。


脳内シミュレーションでは、詩音が涙を流し、漫画みたいに『ずっと待ってたんだからね!』とか言って抱き付いて来るはずだった。


俺は、軽く謝りつつ、詩音がぽかぽかと殴る拳をあっさり捕まえて、そのまんま……チューの一つも決めるもんだと思ってた。
< 220 / 235 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop