小悪魔な彼の想定外な甘い策略
『は?』

思わず聞き返す俺を、詩音は睨み付けた。

『なんか変わったよね、真咲。カッコつけちゃってバカみたい。サッカー、好きだったんじゃないの?』


何で、今、辞めた部活のことなんて言うんだ?と、ポカンとしながらも、久々に近くでじっくり見た詩音を、やっぱりかわいいと思った。


走り去っていく詩音の背中を、俺は呆然としながら見送った。


そのあとに派手な夕立が来て、俺はどさくさに紛れて泣いた。


当然ずっと側にあると思っていたものが無くなる、ていうか元々無かったらしい、という感覚が、あんなに恐ろしいものだと思わなかった。


その日から、俺は少し変わったかもしれない。

やけくそ、なんて言葉でまとめるほど単純な自分が情けないけど、きっと自暴自棄だったんだろう。
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