小悪魔な彼の想定外な甘い策略



「ねー、真咲、もう止めたら?」


バーが休みの日曜の夜、一緒に夕食を食べていた詩音が、ふと手を止めて言う。


「……何を?」


詩音が、作ったカレーに、ソースを入れる俺の癖についてだろうか。
いくら貧乏くさいと言われても、この味は止められない。


「女の子に、ちょっかい出すの」


「なに、妬いてんの?そういうんじゃないだろ、俺達」


昔のことを回想していたもんだから、そのタイムリーさに飛び上がりそうになる。

その上、なんか、めちゃくちゃ嬉しいのに、不機嫌そうな声を出しちゃう俺。


「んー。あたし、あのカップルなんか好きだからさー、あーいう人達を悲しませるようなの、止めたら、と思って」


「……あのカップル??」


ぽかん、とする俺。だって、思い当たらない。
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