小悪魔な彼の想定外な甘い策略
いや、反則でしょ?その、イケメンの距離感。


「いや、てか、近……」

ぶつぶつモゴモゴと、口の中で呟く私の顔はきっと真っ赤で、その上こんな挙動不審で、自分で自分が情けなくなる。

私、もうちょっと普段はちゃんとしているんだけどなぁ。


いつもこう。
変な男にひっかかる男運の悪さも確かにあるけれど、恋をすると一気に色々ぐだぐだになる、私の悪い癖。


「すみれちゃんてば、モテそうなのに、かっわいーーー」


周りに聴こえるか聴こえないか位のトーンで耳元でささやくのは本気で反則でしょう。


完全にからかっているんだと分かっていても、心臓が口から飛び出しそう。
いやー、古い表現だけど、本当にそんな言葉が脳裏に浮かんだんだもの。


耳が熱い。
照明が暗めでよかった。


注文が入り、そちらへ行ってしまった蓮田さんの背中を見つめながら、私は必死で動悸を整えていた。
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