小悪魔な彼の想定外な甘い策略
「失敗かどうかなんて、まだ、わかんないじゃん……??」


自分でも情けないと思うけれど、段々弱まる私の声は語尾に至っては音が出ていたかどうか自信がない。

でも、確かに今まで私は男運が悪かったけれど、蓮田さんは違う。
その事は、親友とも呼ぶべき間柄で信頼を置いているなっちゃんだからこそ、伝えたい。


そんな私の熱い思いをよそに、なっちゃんがお勧めの熟成肉にカシスマスタードが添えられたものをパクリと口に入れ、絶対に咀嚼し終わっていないタイミングで喋り出す。


「分かるわよ、すみれのことだから、ちょっと顔が好みのタイプの男に頼られたりギャップ見せつけられたりいつもと違う面を発見したりして、コロッと好きになるんだよね」


ぐ。
た、確かにギャップには弱いかもしれない……。

でも、と反論しかけた私より先に、なっちゃんが話を続ける。

「大体ね、客に手を出そうとするバーテンなんて、ろくなもんじゃないから」
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