小悪魔な彼の想定外な甘い策略
く、く、く……とどうにか笑いを呼吸で逃す。


今、梶山君を見たら絶対笑っちゃう。


「んじゃ、俺帰りまーす!あ、これ、残りよかったらどうぞ」


「えーサンキュー、お疲れー!」


サンキューの発音に関しては普通なんだ……と思いながら、私も不自然にならない程度に声をかける。


「お疲れ様でしたー」


私達に向かって手をあげ、さっさと帰っていく梶山君。

さっきの『彼氏候補がいる』なんてとんだ見栄っ張り宣言を取り消す暇もなくて。

まあ、別にいいんだけどさ。梶山君が誰か素敵な人を紹介してくれるわけでもないんだし。


それにしても、その、余りにもさらっとした引き際に『もしかして本当に私を一人にしないようにするためにいてくれたのかな?』なんて、ふと思う。
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