小悪魔な彼の想定外な甘い策略
本来の鍵当番である石川さんが、生徒達の質問に答えたり、見回りなどをしている間に私も自分の仕事に目処がたち、職場をあとにする。



11月になると、急に風の質が変わる気がする。

特に、日が落ちてからのそれは、人肌恋しいどころか本格的に暖を求めたくなるような。


スマホを取り出して時間を確認すると、午後三時半。


一旦帰って、お風呂に入って、着替えて準備をすれば、蓮田さんのところに行くのに丁度いいかな。

でも、六時の開店と同時じゃ、ちょっとねぇ。ぶつぶつ考えながら、帰り道を急ぐ。


やっぱり、恋をするのは、いいものだ。


足元に目をやると、お気に入りのフリンジがかわいいベージュのショートブーツ。
……いや、この間ネットで買ったロングブーツで行こう。

頭の中で、あれやこれやとコーディネートをしながら足を早める。


ああ、もう。本当に楽しい。


小走りで苦しいのか、蓮田さんの甘めの笑顔を思い出して苦しいのか、とにかくはやる胸を押さえながら、私は家へと向かって行った。
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