小悪魔な彼の想定外な甘い策略

そうだ。

聞いてみようかな。彼女がいるかどうかくらい、聞いてもバチは当たらないはず。


なっちゃんの『既婚者パターン』なんて台詞が脳内で再生され、慌てて頭を振る。


もしも……もしも。
彼女とか、奥さんがいるとなれば、それまでのこと。
傷は浅い方がいいし。

酔った勢いで聞いた、ってことにして。


そうだよ、このまま本格的に好きになる前に、きちんとしておきたい。


蓮田さんの忙しくなさそうなタイミングを見計らって声をかけようとする……けれど、時間が遅くなるにつれて忙しさを増す蓮田さん。


結果、タイミングを探して見つめ続けるという変態行為に気づく私。


新しく入店したカップルのオーダーに応えてから、蓮田さんが私の目の前に来て笑う。

「めちゃくちゃ視線感じるんだけど、オーダーは念を飛ばさないで口頭でお願いします」


いたずらっ子みたいな表情もよく似合う。