小悪魔な彼の想定外な甘い策略
はー、かっこいい……とその顔に素直に見とれつつ、思わず口をつく。

「蓮田さんって、彼女とかいるんですか?」


口にしてから後悔する。
私っていつもこう。もっと、気の利いた聞き方とか考えればいいのに。

あーあ。

ふわふわと心地よく酔っていた気持ちが、自分へのガッカリ感で急に覚めた気がした。


いくら酔っているとは言え……。駆け引き、っていうか、もっと言い方ってあるよね。


ガッカリしつつ、蓮田さんの方をチラリと見ると、何だか見たことのない表情。


「え?」


思わず小さく口の中で呟く。


何て言うか……『悪い男』なんてフレーズが頭に浮かぶ。

そこにいるのは確かに蓮田さんなのに、オレンジを転がして照れ笑いをしていたり、優しい顔でオーダーを取ってくれたり、そういうのとは全然違う、企むようないたずらっ子のような顔、っていうのかな。
見たことのない顔で笑っていて。
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