小悪魔な彼の想定外な甘い策略

どうせ男運が悪いから、もう、恋はしない。


そう決めておけば、誰かにふらふらと好意を寄せて傷ついたりしなくてすむ。


そうやって予防線を張り巡らせ、高い高い壁を作っている今の状態が正しいとは思わないけれど。

これは、逃げていることになるのかな。
でも、いいや。

誰に迷惑をかけているわけでもないし。

だって、私本当に男運が悪いんだもの……。


私は、早く着いてしまった事務室の中で今日の仕事内容を確認しながらぼんやりとそんなことを思う。
我が『聡育(そういく)アカデミー』は、ネーミングセンスこそどうかと思うけれど、この辺りでは一番の生徒数を誇っている。

少人数制の授業、個別学習システムの充実など色々謳ってはいるけれど、結局のところ、皺寄せは職員の方に来ていて、時間外勤務の多さは本当に困りもの。

まあ、私の場合はデートがあるのに、とかそういった不満はないのだけれど、それなりに自分の時間が確保出来ないのはきつい。