小悪魔な彼の想定外な甘い策略
そんな押し問答を繰り返しつつ、同時に職場を出たせいで、結局駅までの道を二人で歩く。


「あ、何なら隣の駅にもうまいラーメン屋ありますけど」

「嫌だ、帰る!」


職場を出たことで、回りの目を気にしなくなった分、押し問答のトーンも高め。

「んー、百歩譲ってラーメンじゃなくてもいいですよ?」

何であんたが偉そうに譲る立場なのさ……。
呆れつつ、本音が漏れる。


「私、ラーメンよりお風呂に入りたいから」

「……!」


何故か無言の梶山君を不思議に思ってちらりと見ると、顔が……赤い?

「……どしたの?」

ご丁寧に、口許に片手を当てて、恥じらう乙女のよう。


「それは、一緒にお風呂に入ろうっていう大胆なお誘いですか?すみれさん意外と積極的!……優しくしてくださいね」

後半の台詞から、盛大にボケているいつものやりとりの範疇だと気付く。
顔が赤いのは気のせいだったのね。

「いや、誘ってないし……」


思わず笑ってしまう。本当に、しょうもないやりとり。
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