小悪魔な彼の想定外な甘い策略
ガタン


物音で我にかえる。

反射的に時計を見ると、まだ12時半。
いや、私もどんだけ早く着いているんだよ、って感じだけど。

「……だ、って言ってんだろー?」


誰かの話し声がする。明らかに会話っぽいから電話かな?


「うん、うん、分かってるから。はーい、愛してるよ、いやマジで」


うわぁ。丸聞こえなんだけど……。この声アーンドこんなことを言いそうな人、ってことで、誰だか殆ど予測出来てしまいつつ、なんとなく所在なく自分のデスクに隠れるように縮こまる私。


「バかだなー、ほんと。うん、ハハハ、はいはい、愛してる、もう職場だから切るぞ」


声の主がどかどかと足音を響かせて、がらりとドアを開ける。

私の存在に気づかないのか、今まで通話していたスマホを片手でひょいひょいともてあそびながら自席へと向かっていく。
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