私たちの物語
「お邪魔しまーす……」


私と透華はゆっくりと歩幅を進める。

あの人に案内された部屋は、リビングだった。

あ、綺麗な部屋。


「飲み物何がいい?」


あの人が聞いてくる。


「え、いいよっ。

そんなん!

ただ、透華が回覧板を渡すって!!」


あの人がコトっとジュースを淹れる手をとめた。


「ちょっ!

拓巳!

マリオ中断してなかった!」


チリが叫ぶ。

マリオ? ああ。

よく見れば、テレビにはマリオと黄色ピノキオが映っている。

wiiの『マリオブラザーズ』か、懐かしい。


「はぁ!?」


おう、もうちょいで黄色ピノキオが死ぬわ。

透華がリモコンをパスしてきた。


え、やれと?

そりゃあ、家にあるし8のボスも一人で倒したけど……


流石にこれは……



……できてしまった。

ゴールしてしまった。


「うー、勝手にしてゴメン。」


ゆっくり顔を上げると、あの人とチリがいた。

うわー!ゴメンなさーい!!


「よし、サク、一緒にしようっ!

いいよな、拓巳。」


はい?


「おう。

メダルが集まらなくて困ってたんだよ。

リモコン4つあるし、市村さんもしよーや。」


「うんっ、サクちゃんやろっ!」


だから、透華!

そのニヤニヤ顔やめて!


「うん。

じゃあ私、青ピノキオ!」


しぶしぶ頷く。

キャラはいつもの。


「ホント青好きだよな。」


あの人が突っ込んでくれたのが嬉しかった。

窓の外から、あの人の犬が羨ましそうにこちらを見ていた。
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