君とキスをした。
君とキスをした。
私は顔を上げて、綾瀬君に『じゃあまた明日』って言おうとした時だった。
綾瀬君も私の方を向いて、私を見ていた。やっぱり、改めて見てみると綾瀬君はかっこいい。
だけど綾瀬君は何か言いたそうな顔をしている。
ふと綾瀬君がつぶやくような声で
「川崎」
それだけ言って
私の頬に片手をそえて顔を近づけてきた。
綾瀬君の前髪が、私の前髪とぶつかる。
目の前に、真っ直ぐ私を見る切れ長の目が、高く綺麗な鼻が、薄い唇が映った。
私は綾瀬君が何をしようとしているのか、気づいた瞬間、
綾瀬君の唇が、私の唇に触れた。
綾瀬君は、私にキスをした。
でもそれはは触れるだけの軽いキスで、すぐにふわりと綾瀬君の顔が戻っていったから、私は下を向いて目を丸くしていた。
「川崎」
名前を呼ばれ、綾瀬君を見る。
「俺、川崎が好きだ」
綾瀬君が、悲しそうな顔をした。
その時、私と綾瀬くんに影を作っていた夕日が
沈んだ事に、私は気づかなかった。