君とキスをした。

目からあせがでる




「あれ、川崎、どうした」

ちらっと教室の入口を見ると、

同じクラスの綾瀬君がいた。


背が高くて、きりっとした顔の綾瀬君。

前までたしか髪の毛茶色に染めてたけど、ちょっと前から黒に戻っていた。


私は黒の方が似合うと思うから、別に違和感はなかったけど。

「別に…寝てるだけだよ」

私は顔を隠すようにまた腕の中に顔をうずめた。
すると綾瀬君はちょっと早足で私に気に近づいてきて、私の隣に来てしゃがみこんだ。


「今日鼻声だね、川崎」

「普通だよ」

さっきまでの事を何も知らないのに
かまってくる綾瀬君にちょっといらいらした。


私は小さい声でぶっきらぼうに言った。


川崎くんは優しく微笑んで私の頭をそっと撫でた。

私の頭に乗った綾瀬君の手は
思っていたより大きくて、びっくりした。

「彼氏の教室で寝るとか、ほんとに島田が好きなんだね、川崎は」

「……」

私は何も答えられなかった。
頭の中にまた彼の姿が浮かんで、ちょっと泣き止んでたのにまた涙が出そうになる。

「別に…っ、良いじゃん…っ」

声が震えて、吐いた息が熱くなった。

綾瀬君が少し驚いた顔をした。


「…川崎」

「なに」

私は震える声で応える。

少し返し方が冷たいかななんて考える余裕もない。





< 5 / 12 >

この作品をシェア

pagetop