君とキスをした。
やさしい綾瀬君



私は立ち上がって、窓の外を見た。


夕日は半分より少しぐらいもう沈んでいた。
赤とオレンジと黒が、綺麗なグラデーションを描いていて、揺れる夕日がすごく綺麗。

「わー…」

時計を見ると、五時を少し過ぎたぐらい。
気づいたら、一時間ぐらい綾瀬君と喋っていたんだ。

綾瀬君とはあまり喋った事がなかったから、なんだか綾瀬君を少しだけ知れた気がして、嬉しかった。


「綾瀬君、たしかサッカー部だよね。行かなくていいの?」

「ん?あぁ、大丈夫だよ。今日オフだし〜」

そう言って綾瀬君は優しく微笑んだ。

「そっか」

それで、自然に私も笑顔になれた。
私は泣きはらしたからか気持ちがいくらかスッキリしていた。

きっと、綾瀬君は私が別れたことに気がついてると思う。あれだけ泣いたら、いやでも分かるよね。

だけど、その事についてはなにも触れようとしなかった綾瀬君は大人だなと思った。
『別れたの』なんて質問をされていたら、私はきっと綾瀬君を突き放してどこかにいたかもしれない。





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