生神さまっ!
突如右の病室からそう叫んで出てきた女の人。



あたしを一度見た女の人は、はっと一瞬驚いたような顔をして、ちょっと頭を下げるとどこかに行ってしまった。



あたしが頭を下げた時には、もう遥か彼方…ではないけど、もう小さい背中しか見えてなくって。



…いい大人がなに病院の廊下を全力疾走しちゃってるんですか…!?



見た感じ、40前後…けど、綺麗で品がある雰囲気…



…目から涙を大粒流して、廊下を全力疾走してなければ。



ふと、彼女が出て来た右の病室を見る。



あたしが今いるのは、曲がり角。



この廊下を右に曲がれば、病室が5、6部屋あるらしい。



大部屋じゃなくて、個部屋…お金持ちの子とか、思い病気の人とかがいるんだって。



看護師さんに聞いたんだ。



ちょうど曲がって突き当たりの病室の扉が、ちょっと開いてる。




「…ちょっと、だけ」




本当にちょっとだけ。ただ、興味がある…



お母さん泣かせの入院患者とはどんな人なのか…?なんて、あたし、ちょっと失礼かも。



けどそんな思いより覗きたい気持ちが勝って、病室へそろりと近付く。



そして病室の隙間から病室内を……




「…誰?」




…隙間から覗こうとすると、



目の前に…目があった。








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