生神さまっ!
万病薬なんてもの、この世界にはない。

ただ、ある小説家がこの病気にかかった時、死に際に言った言葉が噂として伝わっているだけ。

そして、万病薬の正体は、この病気にかかった者だけが、同じ病気にかかった者にひっそりと伝えられるものであると。



だから、笑って。



それが僕にとって、1番の薬なんだ。




絶対に治らないこの病気を緩和することができるのは、


愛する人の笑みである、と。


とある小説家がそう言った。



彼女はそれを聞き、精一杯笑ってみせる。

それを見た彼は最後に彼女にキスをした。

相変わらずの突然ぶりに、思わず笑みをこぼす主人公。


彼女の様子を見て彼は笑った。そして、息を引き取ったのだった。




「……ぐすっ」



一気に全巻4巻を読み終わって、ひと段落。


感動もので、思わず涙が出るシーンもたくさんあった。


冒険先で出会った人々にもエピソードがあったりするんだ、ホントは。


特に、ラスト。


彼が主人公にキスするところとか、笑って。って言うところだとか。



…でも、ちょっと分からないところもある。



なんで笑顔が万病薬?


やっぱり愛する人っていうのがいないと分からないかも。



それに、彼があえて彼女に万病薬の正体を伝えなかった理由、とか…



「う〜ん…」



「あのー…」



考え込んでる私に、降りかかる声。



見下ろされているのが分かって、顔を上に向けた。



「…大丈夫でしたか?」



「…え?」



目の前にいるのは、あたしを見て不安そうな顔を浮かべる、細身の男の子。



さらっさら色素が薄めの茶色い髪に、茶色い目。


真っ白な肌は、健康的とは言えない感じ。


でも、その白さが逆に儚さを増して、端正な顔立ちをさらに引き立たせている。





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