生神さまっ!
…え?

ひゅっ、と乾いた空気がのどに通る。詰まる。苦しい、苦しい。

必死に、アマテラス様の言葉の意味を頭が理解させないようにしてる。本能が言ってる。理解するな、と。


「…人間界に戻れる…か。
俺は筒に聞いてる。自分はどこかの家に拾われたことになってるって」


どれぐらい時が経っただろうか。

夏樹の声にふと我に返った私は、いやでもその言葉を理解してしまった。


「そうです。あなたたちの存在は、都合よく変えさせてもらっています」


「…正直、ずっと気になっていたの。

あたしは春樹のお見舞いに行った日に、いつも通り孤児院を出た。
あのあと、みんなは…おばちゃんは、何をしているのかなって。

いつか全部終わったら、だれかに教えてもらおうって…」


「…おれは帰るところなんてない。
もう二度と、あんな世界に帰りたくない」


「…”選択”ができるのですよ。ここに残るか、戻るか。

そして、戻る先は大体叶えられることができます。
元の場所。全然関係ない場所。しかし、

ここでの出来事はすべて記憶を消させてもらいます」



ここでの、記憶、全て…

…みんなに出会えたこと。ここで過ごした楽しい思い出も。

冬斗が好きだと気づけたことも、全部…?



「…話を戻させてもらうけれど、冬斗の願いは”自分の存在を消す”…そういうものでした。

つまり冬斗は、冬夜も含めだけれど…人間界に自分が二度と戻れないようにしました。

あんな家に戻りたくない。冬夜を二度と、戻させない。そうゆう意思の表れです」




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