生神さまっ!

九、サヨナラ、

再び目を開いたとき、私はすぐにそこがどこか気づいた。
暖かいオレンジ色の光。ふかふかのカーペットが敷き詰められている床。笑顔を振りまく多くのスタッフ。


「…ここは…」

「…分かるのか、秋奈」

「うん、ここは…

冬斗が…冬夜が昔住んでいた、ホテルだ…」


そして、私が冬斗と出会った場所。

私たちはホテルのロビーにいた。


「アマテラス様が人間界に向かおうとしているって言ってたもんね。もう行ってたんだ…

それにしても、きれいなホテル…
あたし、ホテルとか修学旅行でしか行ったことないから…」

春乃が見とれるのもわかる。
けど…昔ほど繁盛していないのが、なんとなくだけど分かる。

冬斗の力が消えたからなのか。
冬斗を…冬夜を痛めつけることによって冬の力を利用していた支配人は今、どうしているんだろう…

「秋奈様。

冬斗様がどこにいらっしゃるか、分かりますか」


「あ…そうだね、ごめん。
多分だけど、分かるよ」


きっと冬斗と黒姫様は、あそこにいる。

私はみんなを連れてエレベーターに向かい、あえて誰も乗らない時を狙って乗り込んだ。
最上階をおして、しばらく待つ。


「多分だけど、冬斗がいるのは…屋上。

屋上で、冬斗と黒姫さまは”契約”をしていたから」


「屋上になんて、一般人がいけるもんなのかよ?」

「いや、開放はされてなかったし、行く扉もカギがかかってた。
けど…なんとかなるはず!」

「おいおい大丈夫なのかよ…」


夏樹に半分呆れられながらも、私たちは最上階へとついた。
…ここは…

「…秋奈?突然止まってどーしたのー?」




< 670 / 686 >

この作品をシェア

pagetop