生神さまっ!
黙り込んでしまった私たちに、まずいと思ったのか慌てたように支配人さんが言った。

「もしよろしければ、入ってもよろしいですよ」

「…へ」

え、そんな簡単に?
仮にも立ち入り禁止なのに?え??


「私が入らないだけであって、夏場はここは開放しているんですよ。涼しいですからね。

寒いかもしれませんが、掃除も行き届いてますし、ぜひ」


そう言って支配人さんはポケットからいくつかのカギを取り出すと、いとも簡単にそこを開け、上に上る階段の電気をつけた。


「私はご案内できませんが、どうえしょうか」

「…え、いいんですか?」

「いいんですよ。
寒いかもしれませんが、ここからの雪景色はとてもいいものでしょう。

帰りはいつでも、あとで確認させて閉めておきますので、いつでも」


では、と支配人さんは業務員用のエレベーターで下って行ってしまったのだった。

ぽかん、と口が開いたままの私たち。


「…なんか、うまくいきすぎて、怖いな」

「…聞いたことあります。
位が高ければ高いほどの神の私物を持ち歩いていると、幸運が招かれる、と」

「…アマテラス様の、この石か…」

ありがとうございます、ありがとうございます。
私は紫色の小袋をなんども撫でておいた。


「じゃあ、無事開いたし、行くか」

「そーだね!!…この先に、いるはずだもん。冬斗…」


夏樹を先頭に、私たちはその階段を登り始めた。

かつん、かつん、と、私たちの足音だけが響く。


「…なあ、秋奈」

「ん?」


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