生神さまっ!
私の前を歩いていた夏樹が、突然立ち止まる。


「…冬斗の父さんの本当の性格は…あれ、なんだろうな」

「…うん」

「神の力、か…

かっこいい名前だけどさあ、やっぱりそうゆうのって…人を変えちゃうんだろうな」


どんなに優しい人でも、欲に駆られてしまったらあそこまで人格というものは変わってしまうものらしい。

目の当たりにすると、本当に怖く思える。


再び進みだした夏樹は、屋上への扉の前で止まるとドアノブに手をかけた。

そして一度後ろを向いて私たちを見ると、勢いよく、ドアを開いた。



…ああ。昔と同じだ。

昼間なはずなのに、そこに広がるのは夜の世界だった。

極寒のはずなのに、どこか生ぬるい気温が私たちを包む。

光源がわからない無機質な白い光が、薄く屋上を照らしていた。



「…ふゆ、と…」


そして奥には。

こちらを振り向いた冬斗と、美しく長い黒髪に白い着物を身にまとった…黒姫様がいたのだった。






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