生神さまっ!
涙があふれ出て止まらない。
ぬぐってもぬぐっても、鼻水と一緒に出てきて止まらない。

息ができない。泣きすぎて、息ができない。


「なんで…もっと、我儘になってよ…なんで、あぎらめちゃうの…」


なんで、私たちと一緒に過ごしたいともっと思ってくれなかったの。

分かってる。冬斗は思ってくれた。思ったうえで、正しい決断をした。

分かっているけど…


「…ふゆとを、かえしてえ…」


私の我儘だった。ただの、我儘だった。

私がここで生きていく意味を教えてくれたあなたを、私も支えたかっただけだった。支えられなかった。

ぽと、と私の着物の裾から何かが落ちた。


紫色の、小袋。

アマテラス様の…


何かに導かれるように私はそれに手を伸ばし、開けた。

中には真っ黒な石が一つ。手のひらサイズだけど、ずしんと重かった。



すると突然、それが光りだしたのだ。淡い、青い光。次第にそれは大きくなって、そして…一本の線になった。

その線の先に目を向ける…そこには、冬斗の体。

冬斗の胸のあたりに伸びているその青い光の線は、次第に光を強めてゆく。


「これは…」


石を持ったまま私は駆け出し、冬斗のもとへ行く。

横たわる冬斗のそのきれいな顔が…ぴくり、と動いた。



「冬斗…冬斗!?」

「そんなはずはない…だって冬斗の魂は、ここに…」




「…ん…」


次第に開かれる目。状況を確認しようとしているのか、少し左右に動き…私に焦点を当てた。


「…君が…秋奈、か」


声も顔も、なにもかもが冬斗だった。

でも、違う。私はすぐに分かった。


「…冬夜…なの…?」




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