生神さまっ!
「あのね、前に春乃が私に…」




_ゴオオオオォォォォォオオオ!!





「っ!?え、なに!?風!?」



突然、書庫の中にものすっごく強い風が吹き荒れる。



私の腰ぐらいまで伸ばしっぱなしの黒い髪がばさあっと舞い上がる。



生暖かい、決して気持ちいいとは言えない風が体を刺すように私達を襲う…!



バサバサ!と本が持ち上がって、落ちたり浮かんだりを繰り返す。




「秋奈!掴まって!!」


「!うん!」



差し出された冬斗の手を、無我夢中で掴む。



その間も風は容赦無く私達を攻めて、なかなか私と冬斗の手は繋がらなかった。



けどなんとか繋がった時、ぐい!っと冬斗が私を引っ張り、体と体がくっつく。



ちょ、ちょ!こ、こんな状況下とはいえ、普通に緊張する!



でも冬斗はそれどころじゃないみたいで。




「くっ……!」




右手を、風が吹き荒れ、本がバサバサと荒れ狂う書庫の中、高々とあげて…下ろした。



その刹那、さっきまでの風が嘘だったかのように、止んだ。



…いや、違う。



書庫の中に…風が吹き荒れない空間を作ったんだ。



だって、透明の壁みたいなのがうっすら見えるし…その奥では未だ、本がバッサバサと上下運動を繰り返してる。



…髪の毛、ボサボサだ。



視界が悪いと思ったら、私の髪だったんだ。



直そうと思って右手を前に…



……って、あれ?




右手、動かない…………




………ああ!!




バッ!と右手を見ると、しっかと繋がれている。冬斗の左手と。




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