試作
プロローグ
次から次へと湧き上がる水柱に光が差し、幻想的な光景を目に映してくれる。
その場にいる者を魅了する水のショーを、私は彼と楽しんでいた。
隣では目を輝かせ、携帯を横に構え、ショーに食い入る彼の姿。
周りは私たちと同じような男女二人組が仲よさそうにショーを楽しんでいる。
幸せな光景のはずなのに、どうして私は心からこの時を楽しめないのだろう。楽しめないでいる自分に気がついた時、この場にいることさえ嫌になり、どことなく落ち着かなくなってしまう。
けれど、彼の側からは離れたくなかった。
つい愛おしげに彼の横顔を覗き、屈託のない笑みを向けられ、ハッとする。
私はこんな風にこの人の隣にいていいのだろうか。
そう思うことが、こういう幸せな時が来る度に感じてしまう。
本当は、何の迷いもなく自分の思うように突っ走りたいのに、それができないなんて・・・。
19になった私は、人生最大の恋愛にたどり着いたと同時に、人生最大の試練に直面していた。