腹黒司書の甘い誘惑
1.穏やかな司書の本性
立派で煌びやかな門構え。校舎の入口までは結構距離があって、徒歩だとたどり着くまで一苦労。
広い敷地に構えられた滝城《たきしろ》学園は、この辺りでは有名な私立高校だ。

各教室、グラウンド、プール、図書館などは綺麗で使いやすく、部活動も盛んなので入学希望の倍率は毎年高い。

そんな学園にわたしがいる理由。
倉橋 理乃《くらはし りの》23歳。今年からこの学校で事務の仕事をしている。
大学を卒業して就職をしたのがここ、というわけだ。

大学2年のときから住んでいるマンションが住みやすく、引っ越したくないから職場を近い場所で探していた。

どこに配属されるかわからない企業などは絶対に嫌。

広告、ネット、学校への募集。ありとあらゆる就職情報を漁り、必死になって探して見つけたのが薄い就職情報誌に載っていたこの学園の求人だった。

最寄りの駅から電車で二駅。
とても運がよかったと思う。私立高校の事務だなんて。

仕事の内容は事務的なこと以外に、用具の買いつけや整理、急な雨の日に傘を売ってみたり、シャーペンや消しゴムその他文房具を売ってみたり、購買のようなことをしているときもある。
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