腹黒司書の甘い誘惑
＊＊＊


気持ちが弱ったまま月曜日になって、憂鬱な気分で職場へ向かった。

挨拶をしながら事務室に入っていくと、豊子さんが微笑む。

「おはよう、理乃ちゃん。またドーナツ作ったの。食べてね」

そう言ってわたしに一口ドーナツの入ったタッパーを差し出した豊子さんの優しい表情に、なんだかほっとしてじんわりと胸が温かくなった。

「おはよーう。あっ、豊子さんまたドーナツ作ったのねえ。わあ、美味しそう！　食べていいかしら？」

「どうぞどうぞ。美鈴さんも食べて」

明るい表情で事務室に入ってきた美鈴の姿を見ていたら、わたしの口角も自然と上がる。

「理乃ちゃん？　ぼうっとしてどうしたの？」

「いえ、何でもないです」

首を傾けてこちらを見る豊子さんに、わたしは微笑んだ。

特別ではない、いつもの日常が意外と支えになったりする。

和やかな職場でよかったなと思いながらドーナツをいただき、わたしは仕事に集中することにした。
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