腹黒司書の甘い誘惑
仕事は気が紛れてよかった。
やらなければならないことがあると、それに意識を向けることができるから。

自分の部屋などで一人になったときなどは柊也さんのことを考えてしまうけれど、日中はなんとか平気だった。

こうして過ごしていけば、いつのまにか柊也さんのことを忘れることができるかもしれない。

そう思ってわたしは笑顔で仕事をしていた。


少しずつヘコんでいた心も穏やかになってきて、週末にはいつものペースを取り戻した。

「ふう。週の終わりって脱力感が凄いのよねえ」

「わかります」

仕事が終わって息を吐きながら片手で自分の肩を叩く美鈴さんにわたしは頷いた。

今週は一日過ぎていくのがとても長かったような気がする。

金曜日か……。
わたしは視線を落とした。

今日は保育園に行く日だ。
柊也さんからは何も連絡はないから、やはりわたしはもう連れて行かないんだろう。

あたりまえだよね。
だけど……柊也さんが事務室に訪ねてきたり、内線電話をかけてこないだろうかと、少しだけ待ってしまった。
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