腹黒司書の甘い誘惑
何かを探るような表情で目を合わせ見つめられて、驚いたわたしは固まってしまう。

笹本先生はふっと笑みをこぼした。

「ねえ、時間ある? ちょっと話しない?」

「……え?」

姿勢を戻した笹本先生をわたしは見上げた。

「柊也のことで倉橋さんと話をしたいんだ」

戸惑っていたわたしだけれど、その言葉に頷いていた。

柊也さんのことってなんだろう。
頭の中で考えながら笹本先生と歩きだした。


やってきたのは中庭。

職員の休憩室は先生方がいるだろし、中庭にはベンチもあるから座って話をするならここが一番いいと思う。

校舎と通路から離れた奥のベンチに腰を下ろした笹本先生は、わたしを見て隣に座るよう手で促した。
わたしはお辞儀をしてから隣に座った。

「あー……中庭って落ち着くから最高だよなあ。毎日来たい。真夏と真冬は暑いし寒いから嫌だけど」

にっと笑った笹本先生にわたしも合わせて笑ってみる。
だけど話のことが気になって、わたしの表情にはあまり余裕がなかった。
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