腹黒司書の甘い誘惑
「そういう女性が寄ってくるようになって、柊也の方もうんざりして女性のことを軽視するようになった。その頃から特定の女性を作ることはなくなったし、相手に主導されないようにキツい言葉で突き放したりするようになったんだ」

笹本先生の話を聞いて、わたしは最初の頃に柊也さんに言われた言葉を思い出した。

『鬱陶しい』とか『遊びでなら』とか。
そういう事があったから、柊也さんは酷いことを言ったのだろうか。


「女性に対しての柊也の態度は一種の防衛なんじゃないかって俺は思う」

「防衛?」

「気になる女性ができても、琉真さんのことを見ているのかもしれない、と考えて本気になれないのかも。ひねくれた性格も、自分を守るためなのかもしれない」

笹本先生は心苦しい表情でそう言った。
わたしは俯いて、柊也さんのことを思い浮かべる。

「教師も目指してたけどね。そういう事があって琉真さんと同じ道に行くのが嫌になったのか、大学卒業後、柊也は図書館の管理をしてる」

「えっ、柊也さんって教師になりたかったんですか?」

驚いた声を出したわたしに、笹本先生は小さく笑った。

「前に言わなかったっけ? 柊也とは大学のときから一緒だって。俺がこうして教師やってるんだよ? 同じ教育学部だったんだ、専攻とかは違ったけどね」
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