腹黒司書の甘い誘惑
わたしは、ああ、そういえば! と今更思った。

驚いたり納得したりと忙しくしていたが、はっとして笹本先生を見る。

「あ、あの、柊也さんがいないところで話を聞いてしまってよかったのでしょうか」

「いいよ。どうせあいつ自分からは言わないんだから。倉橋さんなら、話しても問題ないって思ったし」

わたしが首をかしげると、笹本先生は微笑んだ。

「倉橋さんの表情とか態度を見ててわかっちゃったんだ。柊也のこと、好きでしょ?」

「っ……」

咄嗟に否定できず、わたしは頬を赤くして言葉をつまらせた。

これはもう、肯定しているようなものだ。

そんなわたしを見ている笹本先生は口許を緩める。

「はじめて会ったとき、柊也が倉橋さんに素を見せていて驚いた。この学園の人には常に猫をかぶっていたからね。その後もなんとなく、倉橋さんへの接し方が他の女性の時と違うなと俺は感じてた」

ふっと笑った笹本先生は、気持ちがバレて困惑しているわたしを見据える。

「柊也も戸惑ってると思う」

「……え?」

楽しそうな表情をしている笹本先生に、わたしはぱちぱちと瞬きをした。
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