腹黒司書の甘い誘惑
「柊也は倉橋さんに惹かれてる。だけどそういう気持ちにブランクがありすぎて戸惑ってる」

真っ直ぐわたしに視線を向けている笹本先生の言葉に、わたしは時が止まったように固まった。

冗談で言っているようには感じられない。

「まあ、俺がそう思うだけで本当のところはわからないけど」

にこりと表情を緩めた笹本先生を見て、体の力が少し解けた。

ただ、話を聞いていたらなんだか物凄く……今すぐ柊也さんに会いたくなった。

このままでいたくないと思った。

冷たい態度をされるだろう。呆れた顔でわたしを見るだろう。

それでも、もう一度ちゃんと柊也さんに気持ちを伝えたい。

会いたい。

無償に。


「柊也のところに行ってきなよ。あいつ今日紙芝居やりに保育園でしょ」

わたしの背中を押すように、笹本先生は穏やかな声でそう言った。

「……柊也さんが紙芝居をしてること、知ってるんですね」

「うん。あいつ、あんな感じだけど本当は優しくて思いやりのあるやつなんだよ」

わたしは頷いた。

子供たちに接する彼を見ているとそう感じるから。

笹本先生はわたしを見て微笑む。

「ほら、早く。行って」
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