腹黒司書の甘い誘惑
美鈴さんは陽気にそう言ったあと、にやりと口許を緩めた。

わたしは美鈴さんの言いたいことを予測してしまい、脈を速くする。

「誰をデートに誘うの?」

やっぱり。そう聞かれると思った。
『まあ、誰かは予想ついてるけど』というような表情でこちらを見ているから困る。

「あら、なんの話?」

しかも、室内に戻ってきた豊子さんにまで興味を持たれてしまったからもう、逃げることはできないだろう。

「理乃ちゃんがね、ネットで男性をデートに誘う方法を調べてるの」

「まあ、それはそれは」

ほらね。豊子さんは頬を緩めてわたしを見てくる。

「柊也くんとお付き合いはじめたの?」

「ええっ、えっと」

勘なのか、それともただ聞いただけなのか。

豊子さんのまさかの問いに、わたしは焦って瞬きを多くしてしまう。

「うそっ、付き合いはじめたの!?」

わたしの態度を見ていた美鈴さんは、ぱあっと表情を明るくさせた。
< 121 / 201 >

この作品をシェア

pagetop