腹黒司書の甘い誘惑
付き合っていることは事実だし、隠そうと嘘をつくのもこの状態では上手くいきそうにない気がした。

わたしは隠し事が本当に苦手。

とりあえず、わたしを囲むお二人を見ないで黙って頷いておいた。

それだけで十分だったらしく、美鈴さんの賑やかな声が止まらない。

「よかったわね、理乃ちゃん! ああ、恋が叶うっていいわね。わたしまで気分が良くなっちゃうわ」

陽気な美鈴さんの言葉にわたしは恥ずかしくて小さくなる。

「二人はこうなるんじゃないかって、わたしは思っていたんだから。嬉しいわね、幸せね」

落ち着いていて穏やかな豊子さんだけれど、これもこれで照れてしまう。

「あ、ありがとうございます……」

わたしは俯いて顔を赤くしながら小さな声でそう言った。


しばらくお二人にはにかんだ対応をしていたけれど、見守りポジションでいてくれる豊子さんと美鈴さんは、必要以上にからかったりしてくることはなかった。

だから時間が経つとわたしの照れはおさまった。
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