腹黒司書の甘い誘惑
だが、大事なことがまだ解決していない。

デートに誘う方法。
約束を作りたいけど、どう声をかけようか悩む――


自分がこんなにもじもじする女だとは思わなかった。

仕事が終わって図書館に向かったのはいいけれど、ドキドキして中に入るのを出入り口で数分躊躇っている。

中学生かっ! と心の中でツッコミながら、唇を結んでえいっ、と中へ入った。

そして本のある室内へ続くドアを開けると、カウンターに座る柊也さんを見つける。

気づいた彼がこちらを見て、わずかに唇の端を上げた。

その柔らかな表情にどきん、と胸が鳴って体の力がふっと抜けた。

今なら何でもできそうな気がする。
柊也さんをデートに誘うのも余裕な感じがする――


「あ、倉橋さんだ」

「えっ!?」

どっきん、と飛び上がりそうなくらい驚いて読書用のテーブルの方へ視線を向けると、そこには笹本先生が座っていた。

柊也さんしか視界に入っていなかったわたしは、笹本先生の存在にまったく気づいていなかったらしい。

とても危なかった。
飛びつきそうな勢いで柊也さんの元へ向かいそうだったもの。
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