腹黒司書の甘い誘惑
そんな姿を見られたら、恥ずかしくて倒れる。

「こ、こんにちは!」

動揺しながら挨拶をすると、笹本先生は口許を緩めた。

「倉橋さんのおかげで柊也の機嫌が直ったよ」

からかうように言った笹本先生。わたしの顔が一気に火照った。

柊也さんは笹本先生に鋭い視線を向けるけど、笹本先生はへっちゃらで、わたしにいたずらな微笑みを見せた。

「あ、あの、柊也さん、わたし……」

「別にいい。こいつから聞いたから」

わたしの方を向いた柊也さんは不機嫌そうだったけど、声が少しツンとしてるくらいで、突き放すようなものではない。むしろ――

「こっちに来なよ」

ちょっと優しい気がする。
これは、わたしが柊也さんのことを好きすぎてそう思うだけなのか。

緊張しながらちょこんとカウンターの前に立つと、再び彼の視線がわたしに向く。

「カウンターの中入っていいから。隣においで」

「は、はい」

隣においで、だって。
頬が緩みそうになりながらカウンター内に入って、丸椅子を柊也さんの隣に置いてドキドキしながら座った。
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