腹黒司書の甘い誘惑
一部始終を見ていた笹本先生がくすくす笑う。

なんかもう嬉しいやら恥ずかしいやらで、わたしは熱い頬を押さえた。


「で、なに?」

「え?」

「ここに来たのは、何か用があるんじゃないのか」

「あっ……えっと……」

こちらに視線を向けた柊也さんは、もじもじするわたしに首を傾げる。

柊也さんと予定を作りたくて思いきって訪ねたけど、笹本先生がいるから後にしたい。

「会いたいから、会いに来たんですけど」

そわそわしながらそう言ったら、柊也さんはじっとわたしを見つめてきた。

すぐ隣にいるのだから、あまり見ないでほしい。
綺麗な顔にどきっとしてしまうじゃないか。

「じゃあさー、三人で飯食いに行かない? さっき柊也と食いに行こうって話してたからさ。倉橋さんも一緒に。なあ、柊也?」

陽気な声でそう言った笹本先生が柊也さんを見る。

柊也さんはわたしを見ていた。

「君が大丈夫なら」

「あ……はい、大丈夫です」

「なら行こう」

わたしは頷いた。
柊也さんが行こうと言ってくれたことが、素直に嬉しかった。
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